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2025.10.09

熱可塑性炭素繊維複合材(CFRTP)のNEDO事業完遂に関するお知らせ

 フクビ化学工業株式会社と福井県工業技術センターは、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の「脱炭素社会実現に向けた省エネルギー技術の研究開発・社会実装促進プログラム」を活用し、原材料から成形品までの熱可塑性炭素繊維複合材(以下、CFRTP)の一貫製造プロセスの共同開発を進めてきましたが、このたび、NEDO事業を完遂し、CFRTPの量産体制を整えることができました。

 

※ NEDO「脱炭素社会実現に向けた省エネルギー技術の研究開発・社会実装促進プログラム/実用化開発フェーズ/熱可塑性薄層プリプレグを用いた革新的一貫製造プロセスの開発」(事業期間:2021年度~2024年度)

 

1. CFRTPの一貫製造プロセスの概要

 今回確立した一貫製造プロセスは独自性の高い4つの工程で構成されております。

(1)高耐熱樹脂を用いた20μm以下の薄膜フィルムの成形

(2)薄層プリプレグシート(厚み:40μm)の高速成形(40m/分以上)

(3)優れた賦形性を有するチョップドシートの連続成形

(4)ハイサイクルHeat&Coolプレス成形(3分/個)  ※福井県工業技術センターとの共同開発

 

 

 一貫製造プロセスにより、薄層フィルムの製膜から成形までの複数の製造工程を1社で完結させることで、炭素繊維複合材の普及において課題となっていた、コスト削減に大きく貢献できます。

 また、薄層プリプレグシートは高い力学特性を発現するため、製品の厚みを薄く設計することが可能となり、さらなるコストダウンと省スペース化が図れます。

 さらに、熱可塑性樹脂(一度成形した後でも再加熱することで再加工が可能な樹脂)はリサイクル性にも優れており、従来の熱硬化性樹脂(加熱によって硬化し再加熱しても軟化しない特性を持つ樹脂)を用いた炭素繊維複合材に比べ環境負荷の軽減にも寄与できます。

 

2.得られた成果

  (1)高耐熱樹脂を用いた複合材の量産

 CFRTPは軽量・高強度で耐熱性が高いという特長から、自動車分野をはじめ、航空機や宇宙分野においても今後の 需要拡大が見込まれています。しかし従来はプリプレグシート(繊維に熱可塑性樹脂を浸み込ませた薄層薄肉のシート材

料)を含むCFRTPの成形加工には長時間を要し、さらにエネルギーコストが高くなることが普及の妨げとなっていました。

 今回確立した一貫製造プロセスでは従来、成形が困難であった高耐熱樹脂を用いた複合材の量産が可能になり、生産性の向上とともに、低コスト化と製造エネルギーの大幅な削減が可能となりました。

 実際に高耐熱樹脂を用いたCFRTPで自動車のインバーターケースのカバー材と同じ形状で成形テストを行った結果金属で成形したものと同じ形状で成形することが可能であり、重量は1/5の軽さとなりました。

 今回は比較として、同一の厚みで成形しましたが、CFRTPは高い強度を発現するため、金属に比べ薄い肉厚で必要強度を発現することが可能となり、さらなる軽量化が見込めます。

 

                【 NEDO事業の成果物例 : 自動車インバーターケース カバー材 】

     

成形品サイズ : 縦 _ 250mm、横 _ 250mm、高さ _ 45mm、厚み _ 1mm

 

【 従来技術(熱硬化性炭素繊維複合材)との比較 】

 

3.今後の予定

 CFRTPは高強度かつ軽量という特長に加え、リサイクルが容易であるという環境面への配慮からも注目されており、様々な分野で採用の拡大が期待できます。

 フクビ化学工業株式会社は、CFRTPの普及、事業化に向けて、本共同開発で確立したCFRTPの一貫製造プロセスの特長を活かした製品提案や顧客向けサンプル提供を継続するとともに、導入した実証設備を用いた量産化の検討を進め、「高い生産性」と「省エネルギー効果」を備えたCFRTPの量産による自動車などの輸送用機器の軽量・省エネ化を推進し、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。

 

【このリリースに関するお問い合わせ先】

フクビ化学工業株式会社 事業開発本部 CFRP事業開発部 CFRTP開発課 担当:金森 TEL:0776-68-1812